オホーツク 平屋グリーン車の思い出 その1

もう3か月ほど前になりますが、2018年7月から札幌と網走を結ぶ特急「オホーツク」、旭川と網走を結ぶ特急「大雪」に充当されるキハ183系に、かつて函館-札幌を結んでいた特急「北斗」から転用された車両が充当されるようになり、従前より使用されていた車齢の高いキハ183系と交代することになりました。

今回は車両変更の前後のタイミングで引退した平屋グリーン車グリーン車普通車合造車の思い出話などを。2018年10月現在で実際に運用されているハイデッカーグリーン車の話題ではないのであしからず。

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私が初めて「オホーツク」の平屋グリーン車に乗ったのは2015年の2月でした。

吹雪の青森駅から「はまなす」のカーペットカーに乗り、まだ街全体が薄青い早朝の札幌駅に到着。1時間ほどの接続時間で乗り込んだのが「オホーツク1号」でした。

 

今よりも車両に関する知識も乏しかった私は、特に珍しいものに乗っている自覚もなく、なぜこんな中途半端に普通席をねじ込んだのかなぁとぼんやり考えるのみでした。そしてそんな思いも、車窓を覆い尽くす吹雪によっていつの間にか吹き飛ばされていました。 

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吹雪による遅延を徐々に抱えながら遠軽に到着。ドア扱いをした途端、おもむろに車掌さんと当時はまだ乗務のあったグリーンパーサーさんがやってきて、グリーン席の回転を始めたことにも驚きました。

そして、事前に頼んでおいた遠軽カニ飯を届けてもらった時も、頼んでいないのに、パーサーさんが温かいお茶を一緒に出してくださったのにも驚き、やたらとお礼を言ってしまった記憶があります(笑)

 (当時も縮小傾向にあったとはいえ、グリーン車に乗るとソフトドリンクのサービスが一部列車に残っていました)

冬靴を履いていてもわかるやや厚めの絨毯や、気動車なのに気を付けないとエンジン音が聞こえないレベルの遮音性、そしてどこからともなく醸し出される(?)車両全体に漂う落ち着き。

グリーン料金という追加料金が、ただ広くてフカフカな座席に対して支払われているだけのものではないことに気付かせてくれるきっかけになったのが、私の場合は「オホーツク」の平屋グリーン車だったのかもしれません。

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結局30分ほどの遅延で終点網走に到着。全面はご覧のとおり真っ白で列車愛称を掲出しているのかどうかもよくわからない状態でした。

この日は午後から天候が悪化し、後続の3号は大幅な遅延、それ以降は運休になってしまったと記憶しています。

雪原の中をひたすらに突き進んでくれた183系に感謝しながら網走のホテルで暖をとり、隙を見て観光に繰り出していました。

 

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そして時は流れ、あの無理やりねじ込まれた普通席はもともと業務用のスペースであったこと、増結抑制という目的があったことなどを知り、またファンの間からは「キロ9」と呼ばれる、普通席を増設していない原形車両があることも知りました。しかしその頃には気軽に渡道することも難しく、結局「キロ9」とは出会えず、平屋グリーン車の乗車も吹雪の中乗ったあの「オホーツク」のみになってしまうのだなぁと、心のどこかで諦めてしまっていました。

 

さらに時が流れ、キハ183系のスラント型先頭車の引退が囁かれるようになってきた昨年、道北方面のご当地入場券収集を主目的に渡道することになり、久しぶりに札幌駅に降り立ち乗車案内板を見上げると、見慣れない「増1号車」の案内表示…。 

その当時代走の定番と言えばスラント型のキハ183系。そして、グリーン車の代走にはしばしば「キロ9」が充当されていました。

 

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もしかしたらチラリと見ただけだった「キロ9」の運用と自分の旅程と合えば乗車することも可能かもしれないと思ったときの胸の高鳴りはただのイベント列車の比ではありませんでした。

 

だいぶ長くなってしまいました、「キロ9」にまつわるお話は続編としましょう。 

 

 

 

 

片道だけど飯田線秘境駅号

 秘境駅の宝庫として有名な秘境路線、飯田線

18きっぷの季節になると、飯田線を走破する普通列車が混むとか混まないとか…、そんな都市伝説(秘境伝説?)のある飯田線普通列車の他に定期特急「(ワイドビュー)伊那路」が2往復が運転されています。

そしてほぼ各季節ごとに数日ではありますが臨時急行「飯田線秘境駅」号が運転されます。

その「飯田線秘境駅号」に乗る旅行商品がJR東海の子会社、東海ツアーズから発売されていたので、乗りに行ってみました。

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私が参加したツアーは先に「(ワイドビュー)伊那路」に天竜峡まで乗り、ガイドツアーを1時間ほど楽しんでから秘境駅号に乗り豊橋へ向かうものでした。

 

秘境駅号に充当された列車はいつも通りの373系。今の「(ワイドビュー)伊那路」や「(ワイドビュー)ふじかわ」の他に、かつては「ワイドビュー東海」や「ムーンライトながら」、愛称の特にない乗り得普通列車として大車輪の活躍を見せていましたが、かつての勢いは鳴りを潜めているようです。

車内はフリーストップリクライニングシートが並び、デッキがないことと両開きの幅広ドアを除けば特急列車そのもの。

今や懐かしい響きを帯びる「急行」の運用に入るには充分な装備が備わっています。

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秘境駅号はその名の通り、乗降客数の見込める駅ではなく「秘境駅ランキング」上位の駅に止まり、駅ごとに停車時間は異なりますが散策タイムも設けてくれます。

秘境駅独特の「何もない」という空気感を山間のあっつい空気と一緒に身体に染み込ませながら列車は一路豊橋をゆっくりと目指していきます。

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秘境駅として名高い「小和田」駅と秘境駅号。

いつもの「(ワイドビュー)伊那路」運用では当然ですが通過してしまうので、しっかり止まっている373系と駅舎の組み合わせは秘境駅号ならではなのでは…?

 

東海ツアーズのスタッフの方や秘境駅号の車掌さん、また沿線の皆さんまで。運転に関わる皆さんのおもてなしの気持ちが伝わってくる、温かい片道秘境駅号の旅でした。

 

(きっぷ収集もしている筆者としては、団体での乗車だったので自分の座席分の指定券が手元に残らなかったのが残念な点ですが、一般販売枠は10時発売即完売が定番の様ですので、乗れただけでよしとすることにします…。)

徒然なるままにジョイフルトレイン その4

 

ご無沙汰気味になってしまっているジョイフルトレインシリーズ。まだまだ津軽海峡を渡ることはせずに、道内の列車を紹介していきます。

今回は道内最大の駅、札幌にも乗り入れていたSLニセコ号です。

札幌から小樽を通り、「山線」の愛称もある函館本線余市ニセコ蘭越まで向かいます。

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編成はSL+旧型客車+DLのプッシュプル編成。

列車は蘭越まで運転されますが、指定席扱いなのは倶知安まで。

車内では停車駅や到着時刻の案内のほか、車窓から見える景色の解説や、駅周辺の観光地の案内もありました。

倶知安からは全車自由席の快速列車になります。なんという乗り得な列車(笑)

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SLニセコ号のDL側@小樽駅。DE15ということは冬になればラッセルヘッドをつけて除雪に大活躍するのでしょうね。

 

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筆者が乗車した時は秋のハロウィン直前だったので(?)、ニセコ駅には大量のカボチャたちが…(笑)

この時はまだきっぷに対する興味があまりなかったので、窓口には寄らずに手ぶらで撤退。今考えれば常備券や観光入場券など仕入れるべき裏白のきっぷがたくさんあったのに………。

 

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ヘッドマークに「HOKKAIDO Railway Company」の文字を誇らしげに掲げて走っていたC11-207。まさか関東で再会することになるなどとこの時は思うはずもなく…。

 

保安装置の関係で、札幌、函館などでの運行は当面の間厳しいという話も聞こえるJR北海道のSL列車。

北海道随一の大都市、札幌に乗り入れていたSLニセコの乗客数は多かった事と思いますが、安全を軽視することは許されませんし、現在のJR北海道を取り巻く現状を考えた時、観光列車に注力することが出来ないことも充分理解できます。

現状では道東での運行に限られSLも1両に限られてしまっていますが、末永くその1両が走り、愛されることを願っていますし、願わくば苗穂で長い眠りについているC62の復活が実現せんことを……。

 

真岡鉄道のSL減車?!

先日、下野新聞に「SL 1台廃止へ 真岡鉄道が譲渡検討」という見出しの記事が掲載されました。

記事によれば、真岡鉄道ではSL利用者の減少やSL老朽化に伴う維持費の上昇を理由に、現在の2台体制の継続を断念する方向で検討し、1両については静態動態を問わずに譲渡先を探しているとのこと。また、慢性的な赤字が続く真岡鉄道の在り方について実務者レベルでの検討チームを立ち上げることも併せて報じられています。

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偶然ですが筆者は6月初旬に真岡鉄道を訪れてSLに乗車しました。

その時はDLが検査入場していたからか、SL+客車+SLのプッシュプルの形になっており、貴重なものを見たものだと満足していたのですが、今般の報道が現実となり、SLが1両のみになってしまった際には、こういったSLによるプルプッシュを見ることは出来なくなってしまうのですね。

 

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引退が噂されているのは2台あるうちのC11-325。

SL大樹としてJR北海道から「貸与」され、東武鉄道(故障しながらも)運行されているC11-207の後輩にあたる車両です。

真岡鉄道のSLはたびたびJR東日本へ貸し出され、東日本各地のSL臨時列車とし運転されてきた実績があります。

筆者も2015年秋に運転された、C11-325が牽引する「SL 山形日和。左沢線号」に乗車し、左沢線デビューをした記憶があります。当時の写真を掘り出してみました。

 

SLの中では小型に分類され軸重なども他の形式に比べると制限が少ないためか、様々な路線に乗り入れ、運転実績のあるC11の実働車両が減ってしまうことは残念なことです。

 

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上の写真にあるように、C11-325をはじめとした車両が走る第三セクター真岡鉄道は開業から30年の節目を迎えています。これは特定地方交通線として指定され、国鉄(→JR)から分離した形での鉄路存続か、バス転換かを迫られたあの時代から30年以上が経過していることを意味しています。

 

また、平成に入り相次いだSLの復活もひとつの曲がり角に差し掛かっているのかもしれません。

一度は引退した機関車を整備し復活させ、維持し続けることには膨大なエネルギーが投じられているはずです。SLの存在が当たり前だった時代を知る整備士さんも少なくなり、保守部品の確保困難も併せ技術的な問題も多く存在します。

その一方で全国に復活蒸機が見られるようになり、各々がそのキャラクターをはっきりさせてきている今、スポット的に運転される臨時のSLを除けば「ただそこにSLが走っている」というだけでは乗客を充分に集められなくなってきているのかもしれません。

 

厳しい書き方かもしれませんが、「昔懐かしい、かつての姿をそのままに」といったスタイルの運行は、集客という面では今後は厳しくなるのかもしれません。

突発的に設定されるSL列車はすぐに満席になりますが、毎週のように運転され、客車や機関車に目立った装飾のない形で運転されているSLもおかJR東日本のSLみなかみ、SL碓氷に空席が目立っている現状はそれを伺せる状況なのではないでしょうか。

 

下野新聞の記事の後、真岡鉄道からの公式な発表がない現時点では、私が述べている上記の記事はすべてが仮定に基づいたものですが、平成が終わらんとしている今、真岡鉄道を取り巻く環境は大きく動き出しているのかもしれません。

富士にある「富士」を見に

休日にしてはまぁそこそこな時間に活動開始できたので、前から気になっていた、富士急行 下吉田駅の展示車両を見るべく、ふらっとお出かけをすることに。

 

あまりに無計画、行き当たりばったりで出発してしまったため八王子で10分後に到着する特急の存在をスルーして快速列車をチョイス。結果として大月到着が30分以上遅れてしまいましたが、なんとか大月に到着。

 

大月駅構内の留置線で昼寝している車両を眺めつつ普通列車に乗り、一路下吉田駅へ向かいました。

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何度か列車交換を繰り返しながら、下吉田駅に到着。

大月方面から向かうと、ホームに入る前に保存客車の姿を拝むことができます。

駅自体は明るめな木目が印象的で、出入り口にはロゴマーク入りの暖簾…。

このところ全国各地で展開されている(個人的には食傷気味な)水戸岡デザインなようです。

 

さて、気を取り直して、お目当ての保存車両に会いに行くことに。

下吉田駅 ブルートレインテラス」と名付けられているこの広場は、富士急ゆかりの車両と「富士」つながりということで、14系寝台客車が保存されています。

 

車内に入れるのは14系客車のみ、169系は生くびカットモデルだったりとややこじんまりした印象ですが、有効な乗車券、入場券を持っている旅客は無料で入れるというお得なスポットだったりします。

しかも、ブルートレインテラスへの入場に際して入場証、ないし専用入場券を窓口で交付されますが、それが14系客車が描かれたD型硬券という充実っぷり(笑)

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ブルートレインテラス」の名の通り、展示車両の主役である14系寝台客車。

 

カーテンやリネン類など、撤去されてしまっているものもありますが、基本的には現役当時のまま。

私が訪ねた際は他に来場者もいなかったので、いわゆる「ヒル区間」を独占しているような雰囲気でした。

はまなすやあけぼので開放寝台に何度となく乗った経験があるので、通路側の補助いすに座って列車の往来を眺めているだけで、ここに来た価値があったなと思ってしまいました。

 

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駅舎を挟んで反対側に展示してあるのがフジサン特急で使用されていた富士急2000系。

もとは国鉄(→JR東日本)のジョイフルトレイン「パノラマエクスプレス アルプス」です。

これでもかと言うくらい富士山をモチーフにしたキャラクターが描かれていてインパクト充分。

153系から始まる国鉄急行型の末裔として姿を変え、走る場所を変えて走り続けてきましたが、今はこうして後輩たちが行き交う様子を見守っています。

 

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14系客車のそばに展示されている国鉄急行型車両169系。

165系ファミリーの一員で横川-軽井沢での電気機関車との協調運転に対応した形式ですが、こんなブログをご覧になる皆さんはご存知のことでしょう。

恐らく、フジサン特急用2000系を導入する際に部品取り用として富士急入りし、富士吉田(現 富士山)駅構内の側線で留置されていた車両を整備したものなのでしょう。

 

このほかにも、数両の貨車が展示(留置?)されています。また、駅併設の下吉田クラブと名付けられた喫茶店は高い天井と水戸岡デザインではおなじみの「木のあたたかさ」を感じられる開放的な空間で列車の時間までゆっくりとお茶やコーヒーを楽しむことができます。

 

丸一日、ここで過ごすのはさすがに厳しいところがあるかと思いますが、鉄分の濃い方ならば満喫できる空間なこと請け合いな下吉田駅なのでした。