徒然なるままにジョイフルトレイン その11 ニセコエクスプレス

1988年にJR北海道のリゾート気動車として初の「新造車」となった「ニセコエクスプレス」、キハ183系5000番台。その名の通り、新千歳空港に降り立ったスキー客をニセコ方面へ輸送するために製造されました。

120km/h走行にも対応するキハ183系550・1550番台(NN183系)の足回りを基本に、自社の苗穂工場で製造されました。後に続く「クリスタルエクスプレス」や「ノースレインボーエクスプレス」とは異なり、ハイデッカー構造ではなくオーソドックスな平床式を採用していました。天井高を確保するためか、空調設備は床置き式とし、冬季にはこれを取り外し、スキー板置き場としていたようです。この特殊な床置き式冷房装置の整備が困難であったことが引退を早めたとのうわさもあります。

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2017年に引退しもう乗ることは叶わない「ニセコエクスプレス」ですが、先頭車1両がクラウドファンディングによりニセコ町で静態保存されています。

臨時特急「ニセコ」号として札幌駅に入線する様子をホームで見ることはありましたが、私は引退までに乗る機会に恵まれませんでした。そんな「ニセコエクスプレス」ですが、ひとつ思い出があります。

 

2016年3月20日。この日は北海道新幹線開業に伴って廃止される急行「はまなす」上り列車の最終運転日で、20日札幌駅発と21日青森駅発の「はまなす」は全車指定席として運転されました。

ただ、上り「はまなす」は札幌から苫小牧、室蘭方面の最終列車としての利用もあったことから、近距離利用者向けの救済策として、はまなすに続行する形で全車自由席の東室蘭行き臨時急行列車が設定されました。この名もなき臨時急行として充当されたのが「ニセコエクスプレス」だったのです。 

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運よくドリームカーの窓際席を確保できていたこともあり、入線もそこそこに自分の座席につき、ドリームカーならではの大きく倒れる、ふっくらとした座席に身を落ち着けてしまったため、その時の「ニセコエクスプレス」の写真はありません。

ただ、窓越しに短くずんぐりしたフォルムの白い車両が入線する様子を見て、苗穂で待機していた「ニセコエクスプレス」が充当されたのだなと妙に納得したものでした。

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はまなす」の続行として設定された臨時急行が発車した6番線にはこの乗車案内が掲出されていました。山線周りの臨時特急として運転される「ニセコ」のものを転用したものと思います。「臨時急行」の張り紙とは裏腹に英語表記が"Ltd. Exp."となっていることに突っ込みを入れるのは野暮というものでしょうか。

 

私の中では乗車が叶わないまま引退してしまった「ニセコエクスプレス」。しかし、はまなすの最終運転日に窓越しに見た臨時急行の様子もあってか、妙に印象深い列車です。