DLばんえつ物語と青い客車

 JR東日本磐越西線、新津ー会津若松を走る「SLばんえつ物語」。その名の通り、「貴婦人」の愛称のあるSL C57-180がその牽引の任に当たり、首都圏からも(ギリギリ)日帰り圏内とあって、根強い人気のあるジョイフルトレインです。そんな「ばんえつ物語」ですが、SLの検査や故障の際には牽引機をSLからDLへと動力近代化を図った「DLばんえつ物語」へと名前を変えて(まれによく)運転されます。

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新津から会津若松に到着し、入れ替えを待つ「DLばんえつ物語」。DL運転専用のヘッドマークも準備されています。また、2019年GW運転時のヘッドマークには、小さくて分かりにくいですが「HEISEI-REIWA」の記載もありました。

 

「DLばんえつ物語」号は今までもしばしばゲリラ的に設定されてきましたが、2019年GWに設定されたこの列車は牽引機以外にもイレギュラーな要素が含まれていました。

1号車「オコジョ展望車」と2号車普通車指定席に使用されている車両が定期検査のため秋田の土崎工場(秋田車両センター)へ入場しているため、その代わりの緩急車として高崎に所属している事業用車「オヤ12-1」(非営業)が連結されているのです。

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 事業用車両である「オヤ12-1」は保存SL回送時などの伴走用車両として通常の12系客車から改造された車両です。通常は営業用列車に連結されることはほぼないと言え、今回の運転(連結)は貴重な機会になると思い、GWの混雑の合間を縫い行ってみました。

 営業用車両ではなく、当然のことながら指定席としての座席の発売もないので、車内に入ることはできませんが、他の「ばんえつ物語」号客車と同じように停車駅ではドア扱いがあり、貫通路にも「業務用 立ち入り禁止」のA4サイズの張り紙があるのみで、特に強烈な目隠しがしてあるわけでもありませんでした。

 

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 回送時の伴走がメインの走行機会となる「オヤ12-1」。せっかくなので、停車時間などを利用して車内の様子を伺ってみたところ、車内は網棚などの一部接客用設備が撤去されているようでしたが、その他は旅客用の12系客車と大きな違いはない印象を受けました。むしろ、原型からの改造がほぼなされていない(であろう)、原型にもっとも近い12系客車のうちの1両かもしれません。トイレ横の洗面台も自動水洗化されておらず、昔ながらの「押しボタン式」でした。

 

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SL+ばんえつ物語専属客車の整った編成美もよいですが、それを見て知っているからこそ気付けるイレギュラー満載な「DLばんえつ物語」。記念乗車証までご丁寧にDL仕様ですが、チケッターの表記はSLのままなのはご愛嬌といったところでしょうか。押印された日付「31- 4-27」も「令和」になった今ではある意味で貴重な記録なのかもしれません。

6月には客車すべてが高崎の原型12系客車で構成される「DL青い12系客車」号が運転される磐越西線。SLと比べるとどうしても訴求力の劣る臨時列車となってしまうかもしれませんが、ニッチなニーズもしっかり拾い上げて実現していく新潟支社の企画力には脱帽です笑。