185系のうちに…。「ムーンライトながら」

 「ムーンライトながら」、かつては「大垣夜行」として親しまれたこの列車の名前を耳にしたことある方は多いと思います。特にこんな鉄ヲタブログにたどり着くような方はほぼ確実にご存知でしょう。

 現在は18きっぷシーズンに合わせて運転される全席指定の季節臨時快速列車となっていて、185系車両が充当され東海道線の東京-大垣を結んでいます。深夜に出発し早朝に終点へ着くことから、18きっぷなどの格安きっぷで利用する旅行者に重宝されています。

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そんな「ムーンライトながら」、筆者は今まで乗るチャンスに恵まれず、このまま年を重ねてしまうものとばかり思っていたのですが、ふとした思い付きをきっかけに、発車当日の夕方に指定券を確保してしまったため、使いかけの18きっぷを金券ショップで調達。「ムーンライトながら」に乗るためだけに、新幹線に飛び乗り一路岐阜県は大垣を目指したのでした。

当然のことながら18きっぷでは新幹線は利用出来ないので、名古屋までの新幹線は別途課金をすることに。せっかくなので会員登録はしたものの、ほとんど活用出来ていなかったJR東海の「スマートEX」サービスのご厄介になってみました。

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JR各社のインターネット予約システムは受け取り方法などにそれぞれ制限があり、なかなか使いこなすには経験値と言うか、ある種の慣れを要しますが、その違いもまた各社の営業姿勢が表れているようで、個人的には興味深く眺めています(笑)

共通して言えることですが、航空券などと同じように、購入時期が早ければ早いほど割安な料金となり、事前に予定が固まっている人には大変ありがたいシステムです。また、JR東海、西日本の予約システムでは直前の乗車であっても正規料金より気持ちばかりの割引があり、当日、直前の乗車であっても柔軟な対応がとりやすい鉄道の利点を活かしたシステムと言え、航空機と仁義なき戦いを繰り広げている両社らしいやり方だなと勝手に思っています。

 

さて、「ムーンライトながら」に話を戻すと、大垣でしばしの時間調整(養老鉄道の窓口で少々ご厄介になりました)をしてから、電光掲示板に表示されたホームへ。すでに今宵の「ムーンライトながら」の住人となるであろう人々が吹きさらしのホームで列車の入線を待っていました。車両は発車の数分前に入線、ドア扱いが行われるので列車をゆっくり眺める時間はあまりありませんが、多くの人がホームを右往左往していました。

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大垣を発車時点ではちらほらと空席がありましたが、名古屋を出ればほぼ満席。検札の済んだ乗客は思い思いの体勢、装備で列車内での一夜を過ごしていました。昼行用の座席車両を使い、減光もされないので決して快適とは言えない部分も多々ありますが、個人的には在りし日の「はまなす」の座席車両が思い出され、懐かしさを感じながら眠りに就きました。

時折、車内での盗難や指定券を持たない者の強行乗車など、トラブルの噂も聞く「ムーンライトながら」ですが、筆者乗車時は特に大きなトラブルもなかったようで、まだ夜が明けきらない薄暗い東京駅へ、定刻通り私を送り届けてくれました。

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 伊豆へのアクセス特急「踊り子」からの撤退が確実視されている185系。廃車もゆっくりではありますが進行しており、引退が迫っていることは間違いないでしょう。臨時列車化後、373系→183/189系185系と充当車両も変化してきた「ムーンライトながら」にも何らかの変化が起きると考えてよいでしょう。

 このまま、車両はJR東日本が受け持つならば中央線系統から転属してくるE257系が充てられると考えるのが妥当でしょうし、受け持ちがJR東海に変更になるかもしれません。会社間をまたいで運用される列車は縮小傾向にありますから、これを機に臨時列車として設定されなくなる(→事実上の廃止)の可能性も充分にあります。いずれにしろ「ムーンライトながら」、185系に懸案事項のある方は早めの行動がよいかもしれません。

 

徒然なるままにジョイフルトレイン その8 旭山動物園号

久しぶりに北海道に戻り、ジョイフルトレインの紹介をば…。

今回取り上げるのはキハ183系改造の「旭山動物園号」です。

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 その名の通り、旭川駅からバスで30分ほどの立地にある「旭山動物園」へのアクセス列車として、2007年にキハ183系4両を改造して誕生した「旭山動物園号」は途中1両の増結や塗装変更を挟みながら2018年3月まで運用されていました。塗装変更後は札幌方から極寒の銀世界、鳥たちの大空、北海道の大地、熱帯のジャングル、草原のサバンナのテーマ(愛称)が与えられていました。

 車内も動物園の雰囲気たっぷりで、各号車のテーマに沿った飾り付けがなされ、一部座席は「ハグハグチェア」と銘打ったフリースペース兼フォトスポットになっていました。

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 内外装にかなり手が加えられ、ファンシーな雰囲気いっぱいな「旭山動物園号」ですが、ハード自体は他のキハ183系と大きく変わらないものであり、5両編成とある程度の長さもあることから、「旭山動物園号」という単一の目的に特化したネーミングの車両ではあるものの、晩年は季節臨時列車や定期特急列車の代走にも動員され、函館本線 札幌ー旭川だけでなく道内各所にその足跡を残したのでした。

 筆者はこの「旭山動物園号」に2回乗車したことがあります。本来の運用である「旭山動物園号」では親子連れなどを中心にとても賑やかな車内で先述の「ハグハグチェア」などのフリースペースも大人気でした。JRの狙い通りの活況ぶりだな、とはまなすカーペットからの乗継でやや寝不足な頭で思ったものです。

(今から考えれば、札幌―旭川の正規運賃+指定席特急券購入ではなくて、現地での乗り換え時間を使ってSきっぷ+指定券などにすれば、よりきっぷ的には面白かったのではないかと思ったりもしますが、後だしじゃんけんではなんでも言えてしまいますし、過ぎてしまったことなので、あまり気にしないことにします)

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 もう1回の乗車機会は「クリスタルエクスプレス」車両故障に伴い急きょ充当された「フラノラベンダーエクスプレス」でした。

ポップな内外装は当然のことながらそのままで、残念ながら「ラベンダー」な雰囲気を感じ取ることは出来ませんでしたが、「ハグハグチェア」がハグハグしていない状態を目にすることが出来たので、これはこれで貴重な経験だったかと(笑)

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旭山動物園へのアクセス列車として多くの人に笑顔を届け、思い出を運んだキハ183系旭山動物園号」。引退した今は専用の後継車両こそありませんが、同じ札幌―旭川を789系0番台が「ライラック旭山動物園号」としてその任に当たっています。

専用の車両を用意しない代わりに半室グリーン席の販売を取り止め、そのスペースを使ってハグハグチェアーなどのフリースペースを用意しているようです。

 

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今回取り上げた「旭山動物園号」だけでなく、スラントノーズが特徴の183系初期車全体がすでに廃車され、JR北海道誕生後にデビューしたキハ281系すら置き換え対象として名前が挙がってしまう平成の終わり。時が進み、景色が変わることは当然ではありますが、強烈なインパクトを北海道の鉄路に残した「旭山動物園号」のコンセプトを継いだ「ライラック旭山動物園号」が引き続き人気の中で走り続けてくれることを期待しています。

 

伊豆箱根鉄道駿豆線の裏白きっぷ

 伊豆箱根鉄道は小田原を起点とする大雄山線と三島を起点とする駿豆線の2路線からなっています。今回は伊豆箱根鉄道駿豆線のきっぷにまつわるお話です。

 駿豆線内が1日乗り降り自由となる一日乗車券「旅助け」ももちろん非常に便利なきっぷで文字通り「旅の助け」となる有難いきっぷですが、今回はJRとの連絡乗車券と特急券を取り上げます。

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 駿豆線にはJRの特急「踊り子」が片乗り入れしており、修善寺駅にはマルス端末も設置されているようですが、その他の特急停車駅などにはマルス端末はなく、乗車券、特急券ともに補充券・常備券での発行となります。

先述の「旅助け」を利用して駿豆線を楽しんだ後、東京まで「踊り子」を利用するために買い求め、実使用したものが下に示す2枚のきっぷです。

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伊豆仁田駅発行の東京山手線内まで有効の連絡乗車券です。購入を申し出たところ「発券に時間がかかるし、自動改札を通れないのでおすすめしない」と(一般利用客には)有難い助言をいただきましたが、それでも構わない旨をお伝えしたところスムースに発券して頂けました。

 

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伊豆仁田となりの特急停車駅、大場駅発行の指定席特急券です。見づらいですがJR東海の地紋が採用されています。指定・自由/繁忙・通常・閑散と特急券だけでも種類豊富であり、なかなかコンプリートは難しそうです。

 

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 自動改札を通れない、いつもよりやや大振りでペラペラな2枚のきっぷを手に185系「踊り子」に乗っていると、スマートフォンを持っているとは言え、本当に自分が平成も30年が経過しようとしている世界にいるのか不安になってしまいましたが、列車は無事に現代の東京駅へ私を運んでくれました。

 乗車券の持ち帰りをお願いしようと改札の窓口に申し出たところ、その脇を数多くの人がICカードをかざして足早に通り過ぎていきました。30年間の時の流れは改札口の姿も大きく変えていたのです。

 

信州で孤軍奮闘する189系 おはようライナー

 新宿方の中央本線に「新型特急」としてE257系が投入されたのは2001年のことでした。置き換え対象となった183・189系のうち、あるものはそのまま引退し、またあるものは房総方面の特急運用へと転出、そしてまたあるものは波動輸送に充当され日々を過ごしていましたが、次第に廃車は進行し、いつしか絶滅危惧車扱いされるまでにその数を減らしていました。

 数年前からはグレードアップあずさ塗装やあさま塗装などのリバイバル塗装をまとい、話題を振りまいて来ました。ここ最近は首都圏に顔を出す運用があると、沿線にはカメラの放列が並び、充当される列車も満席になることも多いようで、話題性のある車両として多くの鉄道ファンから注目されている車両の一つでしょう。

f:id:goronto_akebono:20190108222847j:plain  そして183・189系最後の1編成が(平日限定ではありますが)長野の地で今日も走り続けています。それが今回取り上げる「おはようライナー」です。

 筆者が乗車した際には6割ほどの乗車率でした。新聞を読むサラリーマン風の中年男性や、コーヒー片手にパンをほおばる若年女性、イヤホンにスマホといかにも現代風な装備でうたた寝する大学生風のグループなど使い方は人それぞれでしたが、地元で「おはようライナー」の存在が定着しているような印象を受けました。

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 この列車には乗車するためには乗車整理券(310円)の購入が必要です。整理券は当日に「おはようライナー」各停車駅で発売されていますが、駅により整理券の発売形態に差があるのも興味深いポイントです。

 まず近距離券売機で整理券を購入すると、JRグループではおなじみのオレンジ色の地紋をした縦長の85mm券で発券されます。松本などのみどりの窓口で購入すると以前取り上げた「湘南ライナー」などと同様のイベント券扱いになるようで、120mmマルス券で発券されます。

 そして、松本駅の一部窓口や端末が設置されていない「おはようライナー」停車駅では常備券が用意されています。

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 実際に筆者が使用した乗車整理券です。

 券売機や窓口での購入へ誘導されてしまうのではないかと不安に思いながら購入を申し出たところ、こちらが拍子抜けしてしまうくらいあっさり発券してくださいました。車内でも常備券を持っている利用者を複数見かけたので、乗車整理券の発行方法として定着しているのでしょうか。

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 平日早朝の塩尻ー長野を走る列車のため、他の地域から直接乗りに行くにはハードルがやや高い列車ではありますが、それだからこそ「普段着姿の189系」を見られる貴重な運用だと思います。

 

 2019年3月のダイヤ改正をもって運用を終了する189系おはようライナー」。引退間際には多くの人が「おなごり乗車」のために集まってしまい、ともすると「騒ぎ」と言っていいくらい盛り上がってしまうこともありますが、どうか最後までいつも通りの静かな日々であってほしいと願わずにはいられません。

 

徒然なるままにジョイフルトレイン その7 リゾートあすなろ

前回の「きらきらうえつ」に引き続き、内地のジョイフルトレインをお伝えしていきたいと思います。と言っても無秩序に取り上げていくと収拾がつかなくなるので、やっぱり北から…。

という訳で、今回はHB-E300系「リゾートあすなろ」です。

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2010年の東北新幹線全線開業を機にJR東日本盛岡支社に投入されたこの車両は「リゾートあすなろ○○」と列車愛称に様々な語尾を入れて多路線を走っています。

私が乗車した時は新青森発、津軽線三厩行きの「リゾートあすなろ竜飛」でした。

このほかにも「リゾートあすなろ下北」、「リゾートあすなろ青森」などの愛称で土日祝日を中心にコンスタントに運用されているようです。

盛岡支社が管轄している路線を幅広く走っている印象で、近隣の秋田支社、第三セクター青い森鉄道などにもちょこちょこ顔を出しています。

 

車両はJR東日本が満を持して開発したハイブリッドシステムを搭載したHB-E300系。

このHB-E300系はこの「リゾートあすなろ」の他に五能線を走り秋田県青森県を結ぶ「リゾートしらかみ」の橅、青池編成や長野県を走る「リゾートビューふるさと」にも投入されています。

ジョイフルトレインというと既存車両の改造ということが多いですが、このHB-E300系に関してはいずれも新製投入となっています。

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車内はシートピッチが広めにとられた回転式リクライニングシートが並びます。

写真は先述の兄弟車の1つである「リゾートしらかみ」の青池編成ですが、ほぼ同一の座席が使用されています。

ご自慢のハイブリッドシステムのおかげなのか、それともそもそも搭載されているディーゼルエンジンの性能なのか正直わかりかねる部分はありますが、ディーゼルカー特有の振動なども少なく、長時間の乗車でもあまり疲れなかった印象でした。

他の特急列車などと比べ、シートピッチが広めにとられているため、足元は広々しており、足を組んでもなお余裕があります。考えすぎかもしれませんが、座席を向い合せにして4人で使用した場合、すこし距離感が出てしまうのではないかと感じるくらいです。

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リゾートあすなろ竜飛」に揺られ、北海道新幹線の高架橋などを眺めながら三厩に到着した後は、青函トンネルの本州側入り口を見に行ったりしてから、津軽線普通列車で「津軽二股」駅で下車、北海道新幹線の開業前だったので当時の津軽今別駅も見てきました。

津軽今別の駅舎も、八戸線色のキハ40も今はもう見ることのできないのが不思議です。

この津軽今別駅を颯爽と通過していった789系「スーパー白鳥」は改造を経て「ライラック」として道央で第二の車生を送っています。

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当時は何気なく撮ったこれらの写真も今は撮ることが叶わないと思うと、日ごろの記録の大切さも思い知らされるように思います。

 

全くもって余談ではありますが、津軽今別駅最末期は、上りホームへ渡るために建設途中の新幹線ホームを横断する形になっており、合法的に新幹線の線路上に立つことが出来る非常に珍しい場所でした。

 尋ねる人も少なくガランとした建設途中の新幹線ホームを下から見上げるというのはなかなか出来る体験ではなく、とても印象に残っています。