伊豆箱根鉄道駿豆線の裏白きっぷ

 伊豆箱根鉄道は小田原を起点とする大雄山線と三島を起点とする駿豆線の2路線からなっています。今回は伊豆箱根鉄道駿豆線のきっぷにまつわるお話です。

 駿豆線内が1日乗り降り自由となる一日乗車券「旅助け」ももちろん非常に便利なきっぷで文字通り「旅の助け」となる有難いきっぷですが、今回はJRとの連絡乗車券と特急券を取り上げます。

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 駿豆線にはJRの特急「踊り子」が片乗り入れしており、修善寺駅にはマルス端末も設置されているようですが、その他の特急停車駅などにはマルス端末はなく、乗車券、特急券ともに補充券・常備券での発行となります。

先述の「旅助け」を利用して駿豆線を楽しんだ後、東京まで「踊り子」を利用するために買い求め、実使用したものが下に示す2枚のきっぷです。

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伊豆仁田駅発行の東京山手線内まで有効の連絡乗車券です。購入を申し出たところ「発券に時間がかかるし、自動改札を通れないのでおすすめしない」と(一般利用客には)有難い助言をいただきましたが、それでも構わない旨をお伝えしたところスムースに発券して頂けました。

 

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伊豆仁田となりの特急停車駅、大場駅発行の指定席特急券です。見づらいですがJR東海の地紋が採用されています。指定・自由/繁忙・通常・閑散と特急券だけでも種類豊富であり、なかなかコンプリートは難しそうです。

 

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 自動改札を通れない、いつもよりやや大振りでペラペラな2枚のきっぷを手に185系「踊り子」に乗っていると、スマートフォンを持っているとは言え、本当に自分が平成も30年が経過しようとしている世界にいるのか不安になってしまいましたが、列車は無事に現代の東京駅へ私を運んでくれました。

 乗車券の持ち帰りをお願いしようと改札の窓口に申し出たところ、その脇を数多くの人がICカードをかざして足早に通り過ぎていきました。30年間の時の流れは改札口の姿も大きく変えていたのです。

 

信州で孤軍奮闘する189系 おはようライナー

 新宿方の中央本線に「新型特急」としてE257系が投入されたのは2001年のことでした。置き換え対象となった183・189系のうち、あるものはそのまま引退し、またあるものは房総方面の特急運用へと転出、そしてまたあるものは波動輸送に充当され日々を過ごしていましたが、次第に廃車は進行し、いつしか絶滅危惧車扱いされるまでにその数を減らしていました。

 数年前からはグレードアップあずさ塗装やあさま塗装などのリバイバル塗装をまとい、話題を振りまいて来ました。ここ最近は首都圏に顔を出す運用があると、沿線にはカメラの放列が並び、充当される列車も満席になることも多いようで、話題性のある車両として多くの鉄道ファンから注目されている車両の一つでしょう。

f:id:goronto_akebono:20190108222847j:plain  そして183・189系最後の1編成が(平日限定ではありますが)長野の地で今日も走り続けています。それが今回取り上げる「おはようライナー」です。

 筆者が乗車した際には6割ほどの乗車率でした。新聞を読むサラリーマン風の中年男性や、コーヒー片手にパンをほおばる若年女性、イヤホンにスマホといかにも現代風な装備でうたた寝する大学生風のグループなど使い方は人それぞれでしたが、地元で「おはようライナー」の存在が定着しているような印象を受けました。

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 この列車には乗車するためには乗車整理券(310円)の購入が必要です。整理券は当日に「おはようライナー」各停車駅で発売されていますが、駅により整理券の発売形態に差があるのも興味深いポイントです。

 まず近距離券売機で整理券を購入すると、JRグループではおなじみのオレンジ色の地紋をした縦長の85mm券で発券されます。松本などのみどりの窓口で購入すると以前取り上げた「湘南ライナー」などと同様のイベント券扱いになるようで、120mmマルス券で発券されます。

 そして、松本駅の一部窓口や端末が設置されていない「おはようライナー」停車駅では常備券が用意されています。

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 実際に筆者が使用した乗車整理券です。

 券売機や窓口での購入へ誘導されてしまうのではないかと不安に思いながら購入を申し出たところ、こちらが拍子抜けしてしまうくらいあっさり発券してくださいました。車内でも常備券を持っている利用者を複数見かけたので、乗車整理券の発行方法として定着しているのでしょうか。

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 平日早朝の塩尻ー長野を走る列車のため、他の地域から直接乗りに行くにはハードルがやや高い列車ではありますが、それだからこそ「普段着姿の189系」を見られる貴重な運用だと思います。

 

 2019年3月のダイヤ改正をもって運用を終了する189系おはようライナー」。引退間際には多くの人が「おなごり乗車」のために集まってしまい、ともすると「騒ぎ」と言っていいくらい盛り上がってしまうこともありますが、どうか最後までいつも通りの静かな日々であってほしいと願わずにはいられません。

 

徒然なるままにジョイフルトレイン その7 リゾートあすなろ

前回の「きらきらうえつ」に引き続き、内地のジョイフルトレインをお伝えしていきたいと思います。と言っても無秩序に取り上げていくと収拾がつかなくなるので、やっぱり北から…。

という訳で、今回はHB-E300系「リゾートあすなろ」です。

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2010年の東北新幹線全線開業を機にJR東日本盛岡支社に投入されたこの車両は「リゾートあすなろ○○」と列車愛称に様々な語尾を入れて多路線を走っています。

私が乗車した時は新青森発、津軽線三厩行きの「リゾートあすなろ竜飛」でした。

このほかにも「リゾートあすなろ下北」、「リゾートあすなろ青森」などの愛称で土日祝日を中心にコンスタントに運用されているようです。

盛岡支社が管轄している路線を幅広く走っている印象で、近隣の秋田支社、第三セクター青い森鉄道などにもちょこちょこ顔を出しています。

 

車両はJR東日本が満を持して開発したハイブリッドシステムを搭載したHB-E300系。

このHB-E300系はこの「リゾートあすなろ」の他に五能線を走り秋田県青森県を結ぶ「リゾートしらかみ」の橅、青池編成や長野県を走る「リゾートビューふるさと」にも投入されています。

ジョイフルトレインというと既存車両の改造ということが多いですが、このHB-E300系に関してはいずれも新製投入となっています。

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車内はシートピッチが広めにとられた回転式リクライニングシートが並びます。

写真は先述の兄弟車の1つである「リゾートしらかみ」の青池編成ですが、ほぼ同一の座席が使用されています。

ご自慢のハイブリッドシステムのおかげなのか、それともそもそも搭載されているディーゼルエンジンの性能なのか正直わかりかねる部分はありますが、ディーゼルカー特有の振動なども少なく、長時間の乗車でもあまり疲れなかった印象でした。

他の特急列車などと比べ、シートピッチが広めにとられているため、足元は広々しており、足を組んでもなお余裕があります。考えすぎかもしれませんが、座席を向い合せにして4人で使用した場合、すこし距離感が出てしまうのではないかと感じるくらいです。

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リゾートあすなろ竜飛」に揺られ、北海道新幹線の高架橋などを眺めながら三厩に到着した後は、青函トンネルの本州側入り口を見に行ったりしてから、津軽線普通列車で「津軽二股」駅で下車、北海道新幹線の開業前だったので当時の津軽今別駅も見てきました。

津軽今別の駅舎も、八戸線色のキハ40も今はもう見ることのできないのが不思議です。

この津軽今別駅を颯爽と通過していった789系「スーパー白鳥」は改造を経て「ライラック」として道央で第二の車生を送っています。

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当時は何気なく撮ったこれらの写真も今は撮ることが叶わないと思うと、日ごろの記録の大切さも思い知らされるように思います。

 

全くもって余談ではありますが、津軽今別駅最末期は、上りホームへ渡るために建設途中の新幹線ホームを横断する形になっており、合法的に新幹線の線路上に立つことが出来る非常に珍しい場所でした。

 尋ねる人も少なくガランとした建設途中の新幹線ホームを下から見上げるというのはなかなか出来る体験ではなく、とても印象に残っています。

 

 

中央・青梅ライナー

 

先日、東海道本線京口を走る座席定員制ライナー列車「湘南ライナー」を取り上げましたが、今度は中央線系統のライナー列車「中央ライナー青梅ライナー」を取り上げたいと思います。

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同じライナー列車を名乗るだけあり、基本的な運用は「湘南ライナー」と似た部分も多く、朝ラッシュ時には東京へ向かう上り列車が、夕ラッシュ時には東京から八王子や高尾、青梅方面へ向かう下り列車が平日のみ設定されています。 

 

日中や土休日は特急列車として使用されている車両がライナー運用に充当されることも「湘南ライナー」と共通であり、「中央・青梅ライナー」ではE257系が運用にあたっています。かつては「スーパーあずさ」として走っていたE351系が一部運用に入っていたこともありますが、現在はE257系のみの運用となっています。

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停車駅ホーム上の自動券売機でライナー券が発売されることも共通ではありますが、「湘南ライナー」が乗車駅付近のみどりの窓口などでもライナー券が購入可能であるのに対して、「中央・青梅ライナー」ではみどりの窓口などのマルス端末ではライナー券の発売が出来ず、基本的な発売形態は券売機でのエドモンソン式乗車券のみとなる点は細かな差異と言えるかもしれません。 

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写真は東京駅中央快速線ホームで購入した、中央ライナーライナー券グリーン車のものです。

湘南ライナー」が普通車は座席定員制、グリーン車は「普通列車用グリーン券」で乗車可能(→グリーン車は定員制ではなく完全な自由席であり、座席の指定は当然なく、着席保障もない)なシステムを採用し、個々に座席の指定がないのに対し、中央ライナーでは普通車、グリーン車ともにライナー券購入時に座席番号が指定されます。

他の新幹線、特急列車の指定席とは異なり、乗車変更、払い戻し不可であり、その旨が券面にも印字されています。

 

 中央線の特急がE353系で統一され、捻出されるE257系が東海道系統の185系を置き換える噂がまことしやかに流れている昨今、この「中央・青梅ライナー」にも充当車両のみならず、何らかの大きな変化が訪れる可能性があり、来春のダイヤ改正後の運用体系が明らかになるまでは要注目の列車と言えるのではないのではないでしょうか。

 

最後に余計なお世話かと思いますが、青春18きっぷでは「グリーン車自由席」は利用可能ですが、「グリーン車指定席」は利用不可なので、18きっぷを使ってご利用の方はくれぐれもご注意を。似たような名前を冠するライナー列車でも、18きっぷでグリーン車に乗れるライナー列車と乗れないライナー列車があるので、ご利用の際はよくご確認くだされ。

 

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と言う内容で記事を書き、予約投稿として記事をセットしていたら、来春のダイヤ改正に関するプレスが鉄道各社より発表される日を迎えてしまい、そのなかでJR東日本からの発表内容に中央線系統のライナー列車の廃止が含まれていました。

料金としては値上げになる一方、新たな着席サービスの導入もあり、中央線の優等列車は一つ大きな変革期を迎えているのかもしれませんね。

徒然なるままにジョイフルトレイン その6 きらきらうえつ

徒然なるままにジョイフルトレイン、まだ北海道の車両で書こうと思っている車両のストックはあるのですが、気分転換も兼ねて本州のジョイフルトレインを1本登場させてみます。

今回取り上げるのは羽越本線を走るジョイフルトレインきらきらうえつ」です。

主な運転区間は新潟―酒田でほぼ毎週末1往復がコンスタントに設定されていますが、年に数回、運転区間が秋田や羽後本荘まで延長されることがあります。その時は「きらきらしらかみリレー」と名称が変わったりするとかしないとか…。

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カラフルなブロックパターン塗装を纏った外観からは想像がつきませんが、種車485系であり、羽越線内にある交直切り替えもお手の物です。

外観同様、車内も種車の面影はほぼなく、明るく開放的な室内に回転式リクライニングシートが配置されています。また、足元をよく見ると、デッキからキャビンに向けてスロープが配されハイデッカー構造になっています。車両中央部の通路から1段ステップを設けてハイデッキとする方法は中央本線系統の183・189系のグレードアップ車両などで行われていましたし、デッキに段差を設ける方法は小田急10000型HiSEや20000型RSEなどで見られましたが、デッキからスロープを伸ばして高さを稼ぐやり方は「きらきらうえつ」独特ではないでしょうか。

噂によると、というか容易に想像はつきますが、車体はほぼ新造なんだそうな。

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4両編成で全車指定席の臨時快速列車として運転される「快速列車」故に18きっぷシーズンなどには快適に長距離移動ができる列車としても脚光を浴びる(?)「きらきらうえつ」ですが、4両中1両は車内販売用のカウンターとラウンジスペースとして使われています。

カウンターでは新幹線車内販売などで見られるようなお菓子や飲み物、お弁当などの車内販売定番商品の他に、新潟銘菓や越後、荘内地方の地酒、おつまみなども取りそろえており、希望すればラウンジスペースを使ってのんびりとそれらを楽しむことも可能です。

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また、小さなことではありますが、車内検札時に乗務員が使用するチケッター。「きらきらうえつ」には専用のチケッターが用意されており、運用によってインクの色も替えているようです。きっぷを保存しておく人たちにとっては思い出が増えていいアイデアかもしれませんね。

 

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2001年からその名の通り羽越本線を中心に日本海沿いに広がる雄大な景色を乗客に届け続けてきた「きらきらうえつ」。しかし、その活躍もそう長くはないのかもしれません。

JR東日本から「きらきらうえつ」と運転区間が重複する新たなリゾート列車の登場がアナウンスされました。その名は「海里」。

リゾートあすなろ」などと同じハイブリッド気動車を採用するそうで、現行の「きらきらうえつ」よりもグルメなどの要素も取り込んでいくようです。

 

485系列を種車にしたジョイフルトレインで他に現存するものは「リゾートやまどり」などがありますが、「リゾートエクスプレスゆう」や「彩」が続々と引退し、原型の485系が定期運用についていない今、これらの車両の行く末も不安を感じざるを得ません。