徒然なるままにジョイフルトレイン その14 とれいゆつばさ

とれいゆつばさ」は2014年から山形新幹線区間(福島-新庄)を中心に運転されている観光列車(ジョイフルトレイン)です。福島以北でしか運用されない場合、これを「新幹線」と呼んでしまっていいものか気になりますが、後に挙げるきっぷも「新幹線特急券」として発券されていますし、今回は気にしないことにします。

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種車秋田新幹線で使用されていたE3系で、塗装も「とれいゆつばさ」専用のものに変更されていています。個人的には「つばさ」用の塗装より「とれいゆつばさ」用の塗装の方が、配色が穏やかだからか親しみやすい印象があります。

この「とれいゆつばさ」最大の特徴は新幹線車内で足湯に入れることで、山形(新庄)方先頭車の16号車が足湯に、15号車が売店を兼ねた「湯上りラウンジ」、12-14号車は普通車指定席扱いの「お座敷指定席」へ改造されています。元グリーン車の11号車は2+2の座席配置や内装をそのままに、普通車指定席に格下げされて継続使用されています。

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運転台直後から足湯スペースと待合スペースを眺めたものです

板谷峠の勾配で足湯のお湯が傾く様子が個人的には興味深かったですが、それ以外にも、待っている間に他の利用客の目に触れる機会を減らすためのパーティションが導線に沿って上手に配置されています。また色々なところに腰かけがあり、靴や靴下の着脱もしやすいようになっています。

なお、足湯のお湯は水道水を加温したものだそうです。構想段階では実際の温泉水を使う計画もあったものの、衛生管理の観点から実現には至らなかったようです。

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2人掛けと4人掛けのボックスシートへ改造された12-14号車、「お座敷指定席」の様子です。座面が畳表になっており、大きなテーブルと相まって非日常感を醸し出しています。「ニューなのはな」などの本格的な(?)お座敷列車ではないため、足を伸ばしてのんびりすることは出来ませんが、シートピッチは充分で足湯を含め数時間の乗車ならば快適に過ごせる座席でした。

11号車の普通車指定席は元グリーン車の座席、内装をそのまま活用しており、一部の愛好家からは「乗り得指定席」として珍重されていたとかいないとか。。。

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新庄から福島まで「とれいゆつばさ」を利用し、そのまま福島乗り換えで上り東北新幹線を利用した時の新幹線特急券です。ただの2列車乗継の新幹線特急券ではありますが、2022年春のダイヤ改正山形新幹線の特急料金体系が変わるため、「幹在特」の表記は今後見られなくなるのでしょうか。

 

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とれいゆつばさ」は東北新幹線管内への延長運転も何回か行われており、2018年末に運行されたときに「お座敷指定席」に運よく乗車出来ました。足湯利用券を求める利用者の列が15号車の売店前に長く延びていた事を覚えています。新幹線車両として本領を発揮する福島までの東北新幹線区間で高速足湯体験を楽しむもよし、奥羽本線(山形線)分岐後に雪見足湯を楽しむもよし、「ミニ新幹線」の持ち味を存分に発揮した臨時運用だったと思います。

 

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なお、新庄駅の案内表示では「とれいゆつばさ」16号車の乗り場案内は指定/自由の区別ではなく「足湯」でした(笑)

 

2014年から板谷峠を中心に走り続けた「とれいゆつばさ」も2022年3月での引退が発表されています。「現美新幹線」と併せ、一時は2種類あった「新幹線のジョイフルトレイン」は姿を消すことになります。昨今の情勢を考えると、今後も臨時運用を専門とする「ジョイフルトレイン」は全検などのタイミングで廃止の流れが続いてしまうのでしょうか。。。

レール&レンタカーきっぷ

「レール&レンタカーきっぷ(R&Rきっぷ)」はJR線と駅レンタカーを組み合わせた企画乗車券です。発売条件が色々と定められているため、大判の時刻表の巻末やweb サイトで確認が必要ですが、条件を満たせば同行者も含め、JRの乗車券部分が2割引き、特急券、グリーン券などの料金券部分は1割引きになり、レンタカーも特別料金で利用できます。2018年の会津若松駅でこんな看板がまだ現役だったので、察するに400系やE2, E3系が花形だった2000年前後にはすでに発売されていたのでしょう。f:id:goronto_akebono:20211114153120j:plain

大まかな流れとしては、

・まず旅程を決めてweb上でレンタカーの予約をして予約番号の交付を受ける

みどりの窓口で予約番号を申し出て駅レンタカー券(120㎜マルス券)を決済、購入し、同時にJR券を購入

という流れです。

レンタカー券の購入後はR&Rきっぷの新規、追加購入は出来ないため、旅程をよく練ってから購入手続きに進む必要があります。

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実際に使用したR&Rきっぷです。券面中央やや右下に2割、1割と書かれているのが割引率で、券面左上に「R&R 950」と書かれているのも特徴です。この時は余白に「レール&レンタカー」の判も押されました。

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 別の機会にR&Rきっぷを利用した時には乗車変更もしましたが、同一区間、料金だったためか、指定席券売機でも対応可能でした。

 実は券売機で変更する前に、某駅の窓口で同じ変更を申し出たの際には窓口氏から「R&Rきっぷの変更はやり方が分からない」と正直(?)に断れてしまっています。えきねっとやe5489などのインターネット予約におされてR&Rきっぷの利用者は減っているのでしょうか。

  安さで考えるとインターネット予約の早期割引+現地のレンタカーも有力な選択肢です。また、「のぞみ」、「みずほ」が利用できないことから、西日本方面へ旅行するときにも注意が必要で、敬遠されてしまう要素なのかもしれません。

 

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(R&Rきっぷを使って借りたレンタカーと小坂レールパークの24系客車)

 

  Web手続き+窓口購入という形なので手続きがどうしても2段階になってしまうことや、JR券の割引に除外期間があること、「のぞみ」やプレミアムグリーン席、各種個室などは適応にならないなど、落とし穴的な条件はいくつかありますが、人数制限もなく条件によっては旅行開始当日でも学割並みかそれ以上に割引されたきっぷが購入な可能なことから、個人的には利用価値の高い企画乗車券だと思います。昨今の窓口廃止の流れを見ていると、R&Rきっぷを指定席券売機でも発売できるようにして生き延びるか、窓口の減少と一緒に運命を共にするか、近いうちにこのきっぷにも運命の分岐点が来ているような気もします。

 

北陸鉄道 浅野川線 「(土日祝限定)1日フリーエコきっぷ」

北陸新幹線 金沢駅の地下、北鉄金沢駅内灘駅を行き来する北陸鉄道 浅野川線。長らく元京王井の頭線3000系(→8000系)がのんびり走っていましたが、東京メトロ日比谷線の03系の導入がゆっくりと進んでいて、世代交代を遂げる日も近いようです。

京王井の頭線の3000系は手ごろな車体長かつステンレス車であるためか、多くの地方私鉄に譲渡され今も活躍してますが、北陸鉄道に譲渡された車両の中には片開ドアかつ狭幅車体の初期生産分が含まれていて、見慣れた拡幅車体の車両とは少し印象が異なります。

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そんな浅野川線に土日限定のフリーきっぷがあります。購入時は400円でしたが、2021年現在は500円に値上がりしているようです。値上がりしても、内灘までの往復のみでも充分元が取れてしまう良心的な価格設定です。

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わら半紙のような磁気券に比べるとすこし柔らかな手触りの券面に8000系のイラストが描かれています。03系への置き換え完了後はこのきっぷのイラストも代替わりするのでしょうか。「エコきっぷ」の名の通り、再生紙から作られているようです。

平日は金箔仕様で石川線も利用できる代わりに1100円の「鉄道線全線1日フリー乗車券」のみの設定で、路線別のフリーきっぷは使えませんが、逆に考えれば北陸鉄道を走る東急7000系京王3000系を一度に乗りつくすことが出来るわけで、ノスタルジーに浸るには最適なきっぷかもしれません。

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個人的には、内灘駅到着前に広がる水辺の景色は解放感がありのんびりとした車内の空気と相まってかなりお気に入りなので、03系への完全置き換えの前にもう一度ゆっくり訪ねてみたいと思っています。

 

ふるさと納税できっぷを手に入れる

その趣旨や制度設計はともかく、様々な自治体が様々な返礼品で納税者にアピールする「ふるさと納税」。以前、北海道釧路町ふるさと納税について取り上げました。受け取ったきっぷは一般的なマルス券で、自動改札も何ら問題なく通過し実使用しました。

goronto-akebono.hatenablog.com

 

 ところで、同じ北海道でも空知地方の一自治体に沼田町があります。

沼田町には留萌本線が通っており、以前は札沼線も石狩沼田までつながっていました。札沼線と言えば北海道医療大学-新十津川の廃止が記憶に新しいですが、札沼線の「沼」は石狩沼田の「沼」からとったものとされます。

石狩沼田駅簡易委託駅で、各種常備券、補充券の取り扱いがあります。2016年に訪れた時の様子は別の記事で取り上げています。

goronto-akebono.hatenablog.com

 

町内にある真布、恵比島の両駅は無人駅で、恵比島駅連続テレビ小説すずらん」では「明日萌(あしもい)駅」として登場しており、今も駅の随所にその面影があります。

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きっぷに興味のある人や連続テレビ小説好きには縁のある沼田町ですが、2021年にふるさと納税の返礼品として「沼田町ふるさと応援きっぷ」が突如登場しました。1万円を寄付(納税)し、用途を「留萌本線の利用促進」に指定することで、100部限定の記念台紙に収めたきっぷを返礼品として受け取れるというものでした。

 

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これが実際に受け取った返礼品(表裏)です。石狩沼田駅で実際に発売している3種類の常備券(番号は伏せていますがバラバラ)と明日萌駅の(疑似)入場券が収められています。

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駅名下にある広告欄が当時のスポンサーである「サッポロビール」から「好きです 留萌本線」に変わっている辺りに芸の細かさと、公共団体としての配慮がみえます。

乗車券は発行から送付までタイムラグがあるため、「発行当日限り有効」の但し書き通り、実使用はできません。釧路町の返礼品だったノロッコ号の乗車券、指定券とは違い、沼田町の返礼品は完全に「記念品」という位置づけなのでしょう。

 

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明日萌駅の「入場券」と比較用のJR北海道の他の駅(網走)で発売していた硬券入場券を並べてみます。JR北海道が正式に発行したものではないので、駅名の前に「北」の表示がなく、値段の表記もないためかややすっきりした券面です。小児断線なども印刷されており再現性の高い「きっぷ」に仕上がっています。また、この「入場券」には常備券と異なり日付の印字はありませんでした。このためだけにダッチングマシンを用意するわけにもいかないでしょうから、そこまでは求めすぎと言うところでしょう。

 

2021年11月現在、ふるさと納税の返礼品のリストを見ると在庫切れになってしまっているようですが、裏を返せば100部の規定数は掃けたということでしょうから、沼田町にとって有効に使われることを願ってやみません。

青春18きっぷ 北海道新幹線オプション券

鉄道ファンに限らず、長期休みに安く移動を済ませたい若者、時間に余裕のあるシニア層など様々な層が利用する「青春18きっぷ」。様々な企画乗車券が淘汰されているなかでも、国鉄時代から継続して販売されている実績からか、今日まで発売され続けています。

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(深い意味はないけれど、青春18きっぷで利用可能な普通列車の例)

しかし、安く移動できるからには制限があり、その制限の最たるものは「JRの在来線 普通列車にしか乗れない」ことです。細かな例外はあるにしろ新幹線や特急などの優等列車や、整備新幹線の開業で経営分離された第三セクター鉄道には乗れないと考えて移動しなければならないわけです。

 

この原則に則ると、在来線である津軽海峡線の一般旅客列車が存在せず、北海道新幹線のみが旅客営業している青函トンネル青春18きっぷで通過することは出来なくなってしまいます。しかしJR北海道の長年の悲願であり、看板列車でもある北海道新幹線18きっぷユーザーをタダ乗りさせるわけにもいかない……。

そこで、有効な青春18きっぷを併用することを条件に、北海道新幹線(奥津軽いまべつ木古内)と道内いさりび鉄道(木古内-五稜郭)を片道1回利用できる企画乗車券が北海道新幹線開業当初から用意されました。それが「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」です。

 

f:id:goronto_akebono:20210502200635j:plain実際に北海道側から使用したオプション券です。木古内駅の新幹線改札で入鋏してもらい、奥津軽いまべつ駅の改札で持ち帰りをお願いしました。記念に北海道新幹線車内で車掌からH5系を模したスタンプも押してもらっています。

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オプション券と一緒に発券される案内券には色々な注意書きが書かれています。

津軽海峡線時代から津軽線津軽二股駅津軽海峡線津軽今別駅は隣接している迷双子駅でしたが、ついにJRから公式に乗換駅として案内されるようになったことが、個人的には一番の驚きです。

 

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乗り継ぎは実際に移動するときのダイヤ構成によると思いますが、2017年9月の利用当時は実行可能と思われる乗継は数えるほどしかなく、お世辞にも使い勝手の良いものではありませんでした。北海道新幹線津軽線の接続がうまくいかない場合が多かった印象があります。

 私が利用した時間帯は昼過ぎに函館を出て、青森方へ夕方に抜けるパターンでした。函館から木古内まで乗車した列車が、道内いさりび鉄道のイベント対応車「ながまれ号」でラッキーだと思った記憶があります。

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在来線が通らないための特例、救済措置とはいえ、青春18きっぷとそれに付随するオプション券で実際に新幹線の2+3列の座席配置に座るのはやはり違和感があり、なんだか落ち着かないまま青函トンネルを通過してしまったのは、私が小心者だからでしょうか。

津軽海峡線時代から、元を辿れば青函連絡船時代から、運賃に関する特例事項の多い津軽海峡。利便性は今一つだとしても、格安きっぷ利用者にもきちんと手当てをしてくれている現状に感謝すべきなのかもしれません。